子どもの人格形成や能力形成にもっとも影響を与えるものはなんでしょうか?
親の育て方でしょうか?
教師でしょうか?
それとも遺伝でしょうか?
人間はもともと白紙
社会契約説で有名なイギリスの思想家ジョン・ロックは「生まれたばかりの人間は白紙(タブラ=ラサ)である」と言いました。
その白紙にどのような絵が描かれるかは、その人が育った環境による。
つまり、子どもの人格形成や能力形成は100%環境(教育)によって決まるという説です。
教育学者のデューイは「私に産まれたばかりの赤ん坊を一人預けてくれれば、スポーツ選手にでも、犯罪者にでも育てることができる」と豪語したと言われています。
遺伝で決まる
それに対して、子どもの人格形成や能力形成にもっとも影響を与えるのは遺伝である、という考え方があります。
体つきや肌の色などは遺伝によって決まる、ということは昔からよく知られてきました。
しかし、近年の脳科学、認知心理学、進化心理学などの発達によって、遺伝が人格形成や能力形成にも大きな影響を与えているということがあきらかになってきています。
週現スペシャル 大研究 遺伝するもの、しないもの【第1部】一覧表でまるわかり 遺伝する才能、しない才能、微妙なもの | 賢者の知恵 | 現代ビジネス [講談社]
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遺伝マインド –遺伝子が織り成す行動と文化 (有斐閣Insight)
安藤 寿康 有斐閣 2011-04-11
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危機感を抱く平等主義
体つきや運動神経は遺伝するのに、能力や性格は遺伝しない、という考えは政治思想の影響もあるようです。
それは『平等主義』です。
能力や性格(含む精神状態)が遺伝するとすれば、それは生まれながらにして格差があることになります。
そして、その格差を努力によって是正すすることは難しく、カースト制度のように不平等が子どもの代までずっと続くことになります。
さらに、犯罪者の子は犯罪者、になる可能性が高い、ということが科学的に証明されてしまっては、差別を助長することになります。
平等主義からすると、これは非常に不都合なわけです。
・・・ということで、人格形成や能力形成に遺伝が大きな影響を与えるということは、世間一般ではおおっぴらに言われることは少ないのです。
が、生物学や心理学、脳科学の間では、遺伝の影響力が極めて大きいことは公然の事実とされています。
もちろん、我々教育者は、それをわかった上で教育の可能性を信じ、環境によって変えられる部分、伸びしろの部分を少しでも成長させていこうと努めているわけです。