橘玲氏の『不愉快なことには理由がある』という本を読みました。
『進化論』をベースとしたコラム形式の社会批評本です。
最近、この橘玲さんの本が好きでいろいろと読み漁っているのですが、この本もたぶんに漏れず、鋭い視点から現代社会に切り込んだ興味深い本でした。
今日はこの本の中で特に興味深かった内容をいくつかピックアップしてご紹介します。
進化論とは?
進化論とは、チャールズ・ダーウィンが発見した「子孫を残すことに成功した遺伝子が次世代に引き継がれる」という理論です。
現在、我々人間が持っている遺伝子はすべて、生き残り、子孫を残すことに成功した祖先が残したものです。
キリンの長い首のような身体的特徴はもちろん、こころや感情、知能も、より多くの子孫を残すために進化してきたものです。
例えば、母の愛情。
子どもに無関心な母と、子どもに愛情を注ぐ母では、どちらが子孫を残す(=遺伝子を残す)確率が高いか?
それは、子どもに愛情を注ぐ母ですよね。
子どもに無関心な母はいくら子どもを産んでも、その子どもはすぐに死んでしまいます。
それでは子孫を残せませんから、進化の過程でそういう母親は、淘汰されていった。
それで愛情を注ぐというプログラムを持った母の遺伝子が引き継がれているのです。
例えば、人間の知能もそう。
少しでも高い知能を持っている方が生き残る確率は高くなります。
それで知能の高い遺伝子が引き継がれていった結果、人間の知能は他の動物に比べて、極端に高くなっていったというわけです。
進化の過程で生まれた『なわばり意識』
野生の環境の中では、仲間に食べ物を横取りされてニコニコ笑っているような個体は、生き残れません。
自分が獲得した食べ物は『自分の物』として命がけで守り、奪おうとする敵を撃退する。生き残り、子孫を残してきたのは、そういう遺伝子です。
これが『所有意識』『なわばり意識』のはじまりです。
生き物はもともと、自分の所有物を誰かに奪われる、ということを極端に嫌うようになっているのです。
だから、多くの人(特に自営業者)は税金を払うことに抵抗感を覚えます。
(サラリーマンのように源泉徴収で税金を持って行かれることには無頓着な人が多いのに・・・)
これは、一度自分の懐に入ったお金を奪われるということが、人間は生理的に嫌いだからです。
領土問題は解決不可能
橘氏によれば、竹島問題、尖閣問題などのいわゆる領土問題も、この延長線上にあるといいます。
人間は「なわばりを守れ!」と強力にプログラミングされていますが、なわばりに閉じこもっているだけでは、遺伝子が途絶えてしまう可能性があります。
そこで、もっと積極的に外に出て、制圧していくこと、
つまり・・・
「相手のなわばりを侵せ!」
というプログラムも持っているそうです。
つまいr、人間は生まれながらにして、自分のものを守り、相手のものを奪うように設計されている、というのです。
このプログラムは非常に強力です。
「領土を守ろう!」というプロパガンダは国民をひとつにまとめあげるほど威力を持っています。
ですから、領土問題について、どちらかが譲歩するということはないのです。
・・・とすると、領土問題は未来永劫続いていく、解決不可能ということになります。
この他にも興味をそそられる内容が盛りだくさんの本です!読んで損はないですよ!